相続の不動産登記 名義変更を自分でやってみた!

相続したけど、登記は専門家じゃないと無理かな?

いえ! 素人の私でもできました!

数年前に発生した相続で、田舎の土地・家と山林の名義変更をしていなかったので、相続登記の義務化を前に自分で登記申請(2023年5月)しました。

自分で登記申請した感想は
・それなりに大変!でも、色々と勉強になった!
・申請自体は意外に簡単!
・次回も自分でやってみたい!
です。

法務局のWEBサイトに登記手続きの説明がありますが、内容が多岐にわたり分かりにくいと思いました。
この記事では、ターゲットを「相続登記」に絞り、法務局の様式を引用し、要点をまとめた記事を「自分でやる不動産の名義変更」として解説します。

相続の不動産登記の義務化について

令和6年4月1日から相続登記(名義変更)が義務化されます。

「相続による取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請を義務付ける」内容です。
この義務化は過去の相続にも適用されます。

名義変更していない不動産があるなら、自分で登記をすることも検討してみてはどうでしょう。

でも、忙しかったり相続自体にに問題などがあれば、専門家(司法書士等)に依頼しましょう。

「相続」に伴う登記は比較的、自分でやりやすい

不動産の名義が変わるのは、大きく分けて「売買」または「相続」の時です。
それぞれの特徴を解説します。

・「売買」時の不動産登記

売買契約の締結、金銭の受領、ローンの実行などの多くの事項と併せて、不動産登記を短時間に確実に実施しなければならないため、専門家(司法書士)に依頼する必要があります。

このため、通常の不動産売買は「自分で登記」に向きません。

「相続」時の不動産登記

「売買」のように「専門性、短時間かつ確実性」を求められることはありませんね。

もし登記申請に不備があっても、修正申請することができるので、じっくり申請にチャレンジできます。

「相続による名義変更」という事実をきちんと証明できれば、申請書の作成自体は難しくありません。

登記申請の添付書類として一番問題となりやすいのは「遺産分割協議書」だと思います。

遺産分割自体に問題なく、相続人(相続を受ける権利がある人)全員の協力が得やすいことが、自分で登記申請する条件だと思います。

遺産相続に問題がある場合、仕事などで時間をとれない方は、専門家に依頼

相続が複雑だったり問題がある場合は、トラブル防止のため司法書士や税理士、行政書士、または総合相談ができる窓口に依頼した方がよいでしょう。

また、初めての場合は調べながら手続きするため、にそれなりに時間がかかります。
仕事などで忙しい方も専門家に依頼した方がよさそうです。

自分で登記申請してみよう!

それでは、登記申請の手続きを解説します。
この記事では、私自身が登記申請したケース(遺言書なし・遺産分割協議書あり)をもとに解説します。

「遺産分割協議書」が無い場合(法定相続)のポイントを以下の記事にまとめています。
   「遺産分割協議をしていない時の不動産の相続登記」(ブログ内リンク)

手続きは個人の状況により異なる場合があります。
詳細は法務局のホームページのガイドをご覧ください
【相続登記ガイドブック】(法務局HPリンク)
登記申請手続のご案内 (相続登記①/遺産分割協議編)(法務局HPリンク)
相続登記チェックシート(遺産分割協議を行う場合)(法務局HPリンク)

また、申請書などの様式は法務局のホームページからダウンロードできます。
[不動産登記の申請書様式について – 法務局](法務局HPリンク)

登記申請はどこでできる?

登記申請は管轄の法務局(本局・支局・出張所)でなければ受付られません。

複数の不動産の管轄が異なる場合は、それぞれの管轄の法務局へ出向いて申請します。

※郵送申請や電子申請の制度もありますが、この記事では触れません。

下のリンクで、管轄地域と法務局所在地を確認できます。

管轄のご案内 – 法務局 – 法務省(法務局リンク)

各法務局では予約制で登記相談も実施しています。
法務局(支局)により多少のローカルルールもあるようです。
最初に相談を受けることをお勧めします。

相続する不動産の情報を確認しよう

不動産の「公図」を確認しよう

相続する不動産に漏れが無いように、不動産がある場所の公図(図面)を確認すると安心です。
公図では一筆(登記上の土地の単位)ごとに線引きしてあるので、分割された土地や私道部分がないか確認できます。

管轄の法務局に行けるのであれば、無料で公図を閲覧できるので、その場で土地を確認して、登記簿を請求するとスムーズです。

【公図の閲覧方法(管轄の法務局に限る)】
・管轄する法務局へ行って閲覧申請し、閲覧する(無料)
 ※地図帳を見るような形式です。

【公図の取得方法】
・法務局(管轄なし)へ行って請求する
・登記情報提供サービス(インターネット)を利用する
・法務局へオンライン請求する

不動産の「登記簿」を確認しよう

「登記簿」は基本的には、「登記申請書」に内容を転記するために使います。

「登記簿」は「土地」と「建物」が個別に登記されているので、請求する時は両方請求します。

「登記簿」の中身は[表題部(土地・建物の表示)]と[権利部(所有権に関する事項)]に分かれています。
内容(特に権利部)を確認しておきましょう。

【特に確認しておくこと】
・所有者(亡くなった人)の登記簿上の住所が、亡くなった時の住所と同一かどうか

住所が一致しているかどうかで用意する書類が変わりますので覚えておきます。
(詳しくは後述「書類5.亡くなった人の住民票除票」)


【登記簿の見方の注意】
・記載の文字にアンダーラインが付いている部分は「削除」の意味です。

例えば「ローン完済し抵当権を抹消したはずなのに記載が残ってる!と驚いたけど、よく見たら記載部分にアンダーラインが付いていた。」みたいなことがよくあります。

【登記簿の取得方法】
・法務局(管轄なし)へ行って請求する
・登記情報提供サービス(インターネット)を利用する
・法務局へオンライン請求する

登記申請書類を揃えよう(申請書類の一覧)

相続登記(名義変更)に必要な書類の一覧です。

  • 1.登記申請書
    ・申請書の本体です。様式は法務局のHPからダウンロードできます。
  • 2.収入印紙貼り付け用紙(登録免許税の印紙)
  • 3.相続関係説明図(または「法定相続情報一覧図」)
  • 4.亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(または「法定相続情報一覧図」)
  • 5.亡くなった人の住民票除票
    ※不動産登記上の住所と一致しない場合は、住所が一致する戸籍の附票
  • 6.相続人全員の戸籍謄本か戸籍抄本(または「法定相続情報一覧図」)
  • 7.不動産を相続する相続人の住民票
    ※登記申請書に「住民票コード」を記載すれば添付不要
  • 8.遺産分割協議書
      ※法定相続分により相続人全員で共有登記する場合は不要
  • 9.相続人全員の印鑑登録証明書
  • 10.不動産の固定資産評価証明書
  • 11.返送用封筒・切手(返却物や、「登記識別情報」を法務局へ取りに行けない場合)

「法定相続情報一覧図」を持っている場合は、添付書類を減らせます
「法定相続情報証明制度」を利用して、その手続きで法務局で発行してもらった「法定相続情報一覧図」を提出できる場合は、上記項番の3,4,6の書類添付を省略できます。

私自身、相続発生時にこの「法定相続情報一覧図」を複数枚発行してもらっていたので、戸籍の束を提出せずに済みました。
この制度の解説記事「使って良かった!法定相続情報証明制度」もご覧ください。

ここから、それぞれの書類について説明していきますね!

書類1.登記申請書

登記申請書類の本体です。
記載例ではA4一枚ですが、申請する不動産が多いと複数ページになります。
複数ページの場合、用紙は片面印刷としてください。

様式を法務局のホームページからダウンロードして作成します。

以下は法務局の記載例に独自の「注釈(吹き出し)」を加えました。
法務局の様式に記載してある注釈と併せてご覧ください。

様式ダウンロード:[不動産登記の申請書様式について – 法務局](法務局HPリンク)
 見出し[登記申請書の様式及び記載例]
 項番[(20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)]の「記載例」

法務局ホームページの記載例の一部を引用

【課税価格】
私道(公衆道路)や保安林などの非課税の土地は「固定資産税通知」に表示されません。
不明な場合は管轄の市区町村に固定資産税課税台帳の「名寄帳」を請求するとよいです。
【登録免許税】
※期間限定の特例措置「100万円以下の土地についての免税」があります。
相続登記の登録免許税の免税措置について(法務局ホームページ)

書類2.収入印紙貼り付け用紙

「登録免許税」の金額分の収入印紙を張り付けるための台紙です。
普通のA4コピー用紙(白紙)です。

「収入印紙貼り付け用紙」は「登記申請書」の後ろに付けて、長辺2カ所ホッチキス留めし、ページ間を見開きにして、ページの継ぎ目に契印(割印)を押します。
※「登記申請書」が複数ページの場合、各ページ間も契印(割印)する。

法務局ホームページの記載例の一部を引用

収入印紙は法務局で販売していますので、法務局で収入印紙を貼れます。

【ポンイント】
・用紙に貼った収入印紙に消印(押印等)をしてはいけません。

書類3.相続関係説明図

相続に関係する人の関係図を作成します。

この「相続関係説明図」を提出すると一緒に提出する戸籍の謄・抄本を返却してくれます。

記載例を参考にして作成しましょう。

※前述の「法定相続情報一覧図」があれば省略できます。

法務局ホームページの記載例の一部を引用

書類4.亡くなった人の出生から死亡までの戸籍

手元に相続時の戸籍がなければ、請求しなおす必要があります。

相続手続きの一般的事項なので、ここでの説明は省略します。

※前述の「法定相続情報一覧図」があれば戸籍添付の省略ができます。

書類5.亡くなった人の住民票除票

登記簿に登録されている「所有者(亡くなった人)の住所」と登記申請の「亡くなった人の住所」が同じであることを確認するための書類です。

亡くなった人の「登記簿に登録された住所」と「亡くなった時の住所」が同一であれば問題はありません。
もし、住所が違う場合は、以下の【注意点】【事例】のとおり対応する必要があります。


【登記簿上の住所と死亡時の住所が一致しないときの注意点】
(前提)
・不動産の登記簿に記載された所有者(亡くなった人)の住所と、自治体でもらう住民票等の住所を一致させる必要がある。
(理由)
・登記簿には所有者の個人情報が「氏名」と「住所」情報しかないため、「住所」が一致しないと亡くなった本人かどうか確認できない。

【対応事例】
・登記簿に登録した住所は父が亡くなる数十年前の住所で、亡くなるまでに数回引っ越しをしている。
(対応1)
・「亡くなった人の住民票除票」では「登記簿の住所「は出ないので、
 →「亡くなった人」の本籍地へ「戸籍の附票」を請求する。(※見つけたい住所を明記すること)
  ※「戸籍の附票」とは「住所の履歴」です。
  ※「本籍地」を移転している場合は、不動産登記した時の本籍地へ請求する必要があります。
  ※古い住所の履歴は「保存期限」などの理由で消滅していることがあります。
 
登記簿と一致する住所が見つからなければ次の(対応2、3)へ

(対応2)
・不動産の「登記済証」(いわゆる権利証)を見つけて添付書類として提出する。

(対応3)
・「固定資産評価証明書(3か年分)」を取得し添付書類として提出する。
  ※「(対応3)」の方法の場合、管轄の法務局に確認しておきましょう。

書類6.相続人全員の戸籍謄本か戸籍抄本

相続人全員の戸籍謄・抄本を添付します。

※前述の「法定相続情報一覧図」があれば戸籍添付の省略ができます。

書類7.不動産を相続する相続人の住民票

原則、相続人の住民票を添付しますが、前述のとおり「登記申請書」に「住民票コード」を記載すれば添付を省略できます。

【住民票コードの確認方法】
・以前に送付されていた「住民票コード通知票」を見る。
・お住まいの市区町村に「住民票コードが記載された住民票」を請求する。
 ※「住民票コード確認票」を無料で交付する自治体もありました。(大阪府大東市)

【注意点】
・ここで必要なのは「住民票コード」です。
 間違って「マイナンバー(個人番号)」を記載しないよう注意してください。


書類8.遺産分割協議書

「遺産分割協議書」が既にあれば、それを提出します。
無ければ以下の法務局の記載例を参考に作成します。
全員の署名(記名)と実印の押印が必要なので、相続人が多いと手間と時間がかかります。

法務局ホームページの記載例の一部を引用

【ポイント】
1.署名(記名)捺印した相続人に漏れがないことを確認しましょう。
 遺産を相続しなくても、相続する権利がある人は「遺産分割協議」に加わる必要があります。
 ※家庭裁判所へ「相続の放棄の申述」をして認められた人のみ遺産分割協議から除外できます。

2.「遺産分割協議書」の氏名の記載は、法的には署名である必要はありません。
 しかし、当事者の意志を明確にできるので、トラブル抑止の観点からできるだけ「署名」がよいでしょう。

【原本の返却について】
大切な「遺産分割協議書」なので、原本は返却してもらう方がよいでしょう。

[手続き方法]
1.「遺産分割協議書」の全ページをコピーし、複製を作ります。
2.複数ページの場合は、原本と同様の体裁になるように、ホッチキス留めし、
  各ページの継ぎ目に契印(割印)をします。(申請者本人分だけの契印でよい)
3.1枚目の余白に「原本と相違ありません」と記載し、申請者の署名捺印をします。
4.原本とコピーの両方を提出します。
5.返却は「窓口返却」と「郵送」を選べます。

相続人が多い時は、相続人がそれぞれ署名捺印した「遺産分割協議証明書」を各自からもらって、登記申請の添付書類とする方法もあるそうです。

書類9.相続人全員の印鑑登録証明書

相続人全員(「遺産分割協議書」に記載された相続人)の印鑑登録証明書を添付します。

提出前に、「遺産分割協議書」に押された印影と同じであるか確認しておきましょう。

【ポイント】
・この登記手続きでは「印鑑登録証明書」の発行日の有効期限はありません。
 (金融機関などの「発行日から3カ月以内」の制限がない)

書類10.不動産の固定資産評価証明書

固定資産の評価額が分かる書類です。

「登記申請書」の「課税価格」と「登録免許税」の計算の元となります。
必ず、最新版(登記申請する年度版)を利用してください。

「固定資産評価証明書」は土地の管轄の市町村、都税事務所で請求できます。

なお、法務局(支所)によっては、納税者に通知される「固定資産税納税通知書・固定資産課税明細書」や「土地家屋名寄帳」で代用できる場合もあります。

書類11.返送用封筒・切手

登記申請の手続き終了後に再度、法務局へ行って原本等返却物や「登記識別情報」を受取る場合は、この返送用封筒は不要です。

※「登記識別情報」についてブログ内リンク[「登記識別情報」って何?]で解説しています。

【封筒の規格について】
封筒のサイズはA4がそのまま入る「角2」規格です。
(法務局で封筒をもらえる場合もあります)

【切手について】
切手については、重さや「登記識別情報」送付の有無で金額が変わるので、法務局で申請書類の提出の時に窓口で切手の金額を聞いて、切手を買う(同一建物内で買える)方法がよいです。

【「登記識別情報」を郵送してもらう場合】
・「本人限定受取郵便」となります。
 受取り方法は「身分証を持って郵便局へ書類を取り行く」等となります。

法務局へ申請に行こう

書類が揃ったら法務局へ申請に行きます。

書類一式のほか、念のため印鑑と身分証明できるものも持って行きます。

この時以外に忘れそうになるのが「現金」です。
「登録免許税」の「収入印紙」代はかなり高額になり、現金のみの対応なので準備しておきましょう。

【法務局に着いたら】
・収入印紙を購入し「収入印紙貼り付け用紙」に貼ります。
・「登記申請書」の「申請日」を記載します。
・「登記申請書」一式を「申請窓口」提出し、席でしばらく待ちます。
 ※郵送で返送を希望する場合は、窓口で「切手」の金額を尋ねます。
  すぐに「切手」を購入し返送用封筒に貼り、封筒を窓口へ提出します。
・「登記申請書」の受付が済んだ旨の話があったら、帰宅します。
 ※登記の完了自体は1~2週間後になり、不備等があれば電話連絡がきます。

【帰宅したら】
・自分でやりきった充実感を噛みしめてください(笑)

「郵送申請」や「オンライン申請」について

前述のとおり登記申請は「郵送申請」や「オンライン申請」の方法があります。

申請に行けない場合は「オンライン申請」よりも「郵送申請」の方がよいと思います。

「オンライン申請」は準備の手間が多く、仕組みや用語も分かりにくいため、初めて登記申請する方にはおすすめしません。

※自分は「相続登記」の前に、別件で「抵当権の抹消」をオンライン申請しました。
 申請は完了しましたが、仕組みや操作が分かりにくく苦労したので、「相続登記」をオンライン申請する気にはなりませんでした。

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